断崖

1950年3月「報知新聞」に掲載された、江戸川乱歩の短編作品。
とある温泉から山路をのぼり、遙か眼下に渓流を望む断崖の上で、二人の男女が自然石のベンチに肩をならべて語り合っていた。女は夫である男に1年前に起きた出来事のおさらいをしたいと言いだした。男は妻の提案を受け入れ、過去に起こった事件の話を始める。
被害者は女の前夫「斎藤」。裕福であった女と結婚した彼は、後に外に愛人を作っていた。夫婦はある日から推理小説に影響を受け、スリル遊戯というものを始める。次第にエスカレートしていくスリル遊戯の中で、妻はいつしか斎藤に殺されるのではと考え始め、ピストルを手にするようになる。
*文中に、現代の社会通念や人権意識において不当・不適切な表現や語句、差別的表現が見られる場合がありますが、創作された当時の時代的背景などを鑑み、また原文を尊重する意味も含め、そのまま朗読しています。