一代でパナソニックを世界的な企業へと成長させ、経営の神様と呼ばれる松下幸之助。累計520万部を超える随筆「道を開く」の概要を紹介するとともに、名経営者の金言が詰まった本や、影響を与えた本など、おすすめのオーディオブックを5選ご紹介します。
名経営者の随筆には、生きる上で大切なことが詰まっている
経営の神様と呼ばれる松下幸之助氏。自らの実体験に基づいて、仕事、人生に対する哲学を語った随筆「道を開く」は、累計520万部を超えて読み継がれています。今回は、この「道を開く」の概要をご紹介した上で、本作以外の松下幸之助氏のおすすめ図書や、名経営者による金言が詰まった本などをご紹介します。ビジネス書を読む際、明日から使えるハウツーを求めてしまいがちです。しかし、長い人生において長期的に効いてくるのは、こういった経営者の実体験に基づいた深みのあることばの数々なのです。一度のみならず、人生の節目 節目に、繰り返し聴ける深い内容になっています。

経営の神様、松下幸之助氏がつづる人生哲学
松下幸之助氏は明治に生まれ、パナソニックグループを一代で築き上げた稀代の名経営者です。経営の神様とも呼ばれ、いまだに数多くのファンを持つ松下氏ですが、パナソニックの経営をしながらも、松下政経塾などの政治塾を設立するなど、人材の育成にも熱心でした。松下政経塾の卒業生は、政治家を中心に経営者や大学教員など、多くの人びとが活躍しています。人材の育成に熱心だった松下氏は、出版事業をメインとするPHP研究所を立ち上げます。本書は、松 下氏がPHP研究所の機関紙に寄せた短文をまとめたものです。ちなみにPHPとは、“Peace and Happiness through Prosperity (繁栄によって平和と幸福を)”という意味が込められています。第二次世界大戦後の混乱期にあって、人々がどう平和に幸福に暮らせるのかを考え、自ら所長となってPHP研究所を創設したのです。
本書には、連載の中から121篇が収録されていますが、1篇が数百文字で構成された短い随筆集となっており、何度も繰り返し聴くことが出来ます。内容は仕事のことのみならず、よりよく生きるためにはどうしたら良いか、困難にぶつかったときの心構えなど、松下氏の人生哲学が詰まっています。
例えば、仕事で成果が出ない人に向けて、次のように語りかけます。
“
仕事が成功するかしないかは第二のこと。要は仕事に没入することである。一心不乱になることである。そして後生大事にこの仕事に打ち込むことである。そこから、ものが生まれずして、いったい、どこから生まれよう。”
賢い人こそ、批判が先に立って仕事に没入しきれないと言います。まずは、一心不乱に没入することが大事だと説いているのです。
仕事との向き合い方を説く一方で、毎日の仕事にどう取り組むかという手法についても語られています。
“
とにかく考えてみること、くふうしてみること、そしてやってみること。失敗すればやりなおせばいい。やりなおしてダメなら、もう一度くふうし、もう一度やりなおせばいい。
同じことを同じままにいくら繰り返しても、そこには何の進歩もない。先例におとなしく従うのもいいが、先例を破る新しい方法をくふうすることの方が大切である。”
毎日のルーティンワークを、ただこなしているだけになっている、という人も多いのではないでしょうか。松下氏は、毎日少しづつでもくふうをすることの重要性を説いています。
日々仕事と向き合う中で、誰しも困難な逆境に合うこともあるでしょう。本書の中ででは、逆境こそが人生のだいご味であるということばもあります。
“
ときには悲嘆にくれ、絶対絶命、思案にあまる窮境に立つこともしばしばあるであろう。しかし、それもまたよし。悲嘆のなかから、人ははじめて人生の深さを知り、窮境に立って、はじめて世間の味わいを学びとることができるのである。”
逆境に陥ったときは、周りのことが見えなくなります。しかし、大局に立って考えると、それもまたよし、だと言うのです。
このように、本書には短文ながら、生きていく上での指針となる示唆が散りばめられています。“自身を失ったときに”“仕事をより向上させるために”など、各章のテーマに沿った随筆が収録されています。今日は、気になる章をピックアップして聴いてみる、という楽しみ方も良いと思います。不確実性の高い現代だからこそ、改め何度でも聴き返したい一冊です。
- 著者:松下幸之助
- ナレーター:大塚明夫
- 再生時間:04:05:21

不況さらによし?経営の神様、松下幸之助による商売の心得
本書も「道を開く」と同様に、一代でパナソニックグループを築き上げた経営の神様、松下幸之助氏による短編随筆集となっています。「道を開く」がビジネスに関する随筆に加えて、暮らしや対人関係、そして究極的には死生観に及んでいるのに対して「商売心得帖」はタイトルの通り、
商売=ビジネスにスポットを当てた随筆集となっています。
短文で読みやすい内容ながら、本書では商売人としての松下幸之助氏の本髄を知りえる随筆がギュッと詰まっています。例えば、松下氏の名言として知られる“
好況よし、不況さらによし”。これは、景気が良いのは良い事だが、不況はさらに良い、という意味です。普通の経営者であれば、不況は悪い、ということになりそうですが、なぜ不況だとさらによしなのか。本書では、その理由に触れていいます。
不景気だからしょうがないと諦めてしまえば、お店はその予想の通りになってしまうと言います。しかし、不景気だからこそ面白いんだと考えて商売に励めば、発展、反映する道はいくらでもあると言うのです。アフターサービスに力を入れたり、お店の整備を積極的に図っていくなど、様々な方策を考えることが大切だと説きます。
“他力に依存することなく、自分がこれまでにたくわえた力によって一つひと つ着実に実施していく。そうすれば、その歩みはたとえ一歩一歩のゆっくりしたものでも、他のお店が不景気で停滞しているのですから、まあ、相当のスピードということになりましょう。そういうことを考えてみますと、
不景気こそ発展の千載一遇の好機であるということにもなるわけです。私は、商売というものは、このように考え方ひとつ、やり方ひとつでどうにでもなるものだと思うのです。”
日々様々な問題が噴出するのが商売ですが、松下氏のこういった商売の心得をうかがい知ることによって、さまざまな難局を切り抜けるための手がかりが得られるのではないでしょうか。
本書以下、「経営心得帖」「社員心得帖」「人生心得帖」「実践経営哲学」「経営のコツここなりと気づいた価値は百万両」の六冊が、「心得帖シリーズ」として一挙に文庫化されています。興味がある人は、そちらも合わせてチェックしてみると良いかもしれません。
- 著者:松下幸之助
- ナレーター:西村不二人
- 再生時間:03:03:33

松下幸之助氏など著名な経営者に師事された思想家、中村天風
中村天風 という人物を知っているでしょうか。1876年に生まれ1968年に亡くなった、実業家、思想家、ヨーガ行者など多彩な顔を持つ人物です。戦時には陸軍諜報員として活動していたという、異色の経歴も併せ持ちます。戦後に、当時は死病と言われた結核にかかるも、インドでのヨーガ修行を経て回復。日本に帰国後は事業で成功を収めた後、自身の悟りを広めるために講演活動に力を入れていきます。その教えを学んだ人物の中には、パナソニックグループを一代で築き上げた松下幸之助氏や、京セラの創業者稲盛和夫氏など、名だたる人物が名前を連ねています。さらには、あの大谷翔平選手も、中村天風の愛読者であるといいます。
名だたる著名人がなぜ、中村天風を支持するのか。それは、中村天風氏が啓蒙して生きた哲学が支持されているからです。天風氏は様々な講演を行い、その内容は著作にもまとめられていますが、一貫して自らの肉体や、精神生命、人生における事柄は、心の運用いかんで決定されるという真理を語っています。簡単に言い換えると、前向きな心が健康な肉体や精神を生み出し、人生をより良くしていく、という風に言えるでしょう。天風氏の哲学はさらに深く、前向きな心の思考作用は宇宙本体と繋がっていることなど、氏の哲学を仏教などを例に用いながら語り続けてきました。
本書は、そういった天風氏の哲学をもとに、成功する人生を送るにはどうしたら良いか、氏の名言を集めた総集編になっています。「欲望」「人生」「力」など全10章で構成されており、各章では天風氏の力強い名言が紹介されています。“