日本の名作怪談劇場 どきどき怖い じんわり怖い ひたひた怖い しっとり怖い
奥ゆかしく情緒豊かな、知っておきたい、聴いておきたい日本の原風景である古典名作怪談。 ただ怖いだけじゃない、みんなが知っているあの話を、実話怪談 百語りの名手 城谷歩の語りと、効果音、BGMでドラマチックに聴かせるオーディオ劇場。
対象:小学3年生以上推奨 内容紹介 「ろくろ首」作 小泉八雲 (33分) 九州菊地の侍、武連(たけつら)は主人を失ったことをきっかけに頭を丸め名前を囘龍(かいりゅう)と改めて旅の僧となった。 旅の途中、甲斐の国の山中で日暮れを迎え野宿しようとしていると、物腰丁寧な木こりに出会い、山頂にある彼の家へ泊めてもらうことになった。 そこは大変粗末な家だったが家の人もみな言葉づかいと良い、立ち居振る舞いといいただの木こりとは思えず、訳を尋ねてみる。すると彼らも元は侍だったという。訳あって懺悔のために木こりになって世を離れていると話してくれた。 さてその晩遅く喉が渇いた囘龍がそっと布団を出てみると、そこには首なしの人たちの胴体だけが転がっていた。 彼らは世にいう「ろくろ首」と呼ばれる化け物だったのである。 「雪女」作 小泉八雲 (30分) むかし武蔵の国に茂作(もさく)と巳之吉(みのきち)という薪拾い(まきひろい)で生計を立てている父子があった。山での仕事が遅くなったある吹雪の夜の帰り道、ほうほうの体(てい)で川べりの渡し小屋までたどり着いたが、渡しの船は激流に流され、船頭もいない。 やむなく二人はそこで夜を明かすことにしたのだが。 夜更けて二人ともが微睡んでしまったすきに、いつの間にか白い着物を着た若い女が現れ、脇で寝ている父親の茂作に白い息を吹きかけて凍り付かせ殺してしまう。自分も助からないだろうと怯えていた巳之吉に、女は「あなたはまだ若く美しいから助けてあげましょう。このことは生涯誰にも言ってはいけません。誰かに話せばその時はたちどころにあなたを殺してしまいますから」そう言い残すと風のように消えてしまった。悲しくはかなくも切ないお話。 「耳なし芳一」作 小泉八雲 (40分) 源平の合戦が終焉した後も、敗戦した平家が沈んだ海辺の村では日日様々な怪奇現象が起こり、これは平氏の怨霊、亡霊の仕業に違いないからと赤間が関に阿弥陀寺というお寺を建立(こんりゅう)し、ねんごろな法会(ほうえ)を行い、ようやくそれの怪異が落ち着いてきたころの話。 巷では目の見えない琵琶奏者(びわそうしゃ)、芳一(ほういち)が注目を集めていた。若くして師匠をしのぐ腕前ではあったが、そのかわいそうな身の上を知った阿弥陀寺の和尚が寺で預かることにした。 その夏、寝付かれずに縁側に出ていた芳一の近くに、鎧甲冑(よろいかっちゅう)を身に着けた侍の足音が近づいてきて「芳一」と呼びかける。 自分がつかえる身分の高いお方がそなたの琵琶を聞きたいというのでついて来いという。 芳一が言われるままについていくと、とても大きな立派なお屋敷で大勢の身分の高い人たちに囲まれて演奏することになる。演奏が終わると、芳一は大層気に入られて、明日からも毎日来いと言われたのだが。 「食人鬼(じきにんき)」作 小泉八雲 (28分) 禅宗(ぜんしゅう)の僧、夢想国師(むそうこくし)が美濃(みの)の山中で道に迷い困っていた時。道行く少し先に小さな庵室を見つけ訪ねてみると、年老いた僧が出てくる。 道に迷い大変困っており、今夜一晩の宿をと頼むのだが断られてしまう。 老僧は代わりに里までの道を教えてくれたため、夢想国師は言われたままに進んでみると、十二、三ばかりの家が立ち並ぶ小さな村にたどり着いた。その中でも一番大きな里長(さとおさ)と思われる百姓家を訪れると若い家主(やぬし)が事情を聞いて丁重に中に招き入れてくれた。奥には村人がたくさん集まっており異様な雰囲気であった。 その夜中、寝ている夢想国師の部屋に入ってきた家主は「今夜、父が亡くなりました。この村では死人が出た夜は生きている者は皆、村を出なければいけない決まりがあります。 わたしたちと一緒に来ても良いし、もしお坊様が恐れを知らないなら、今夜ここで何が起きるかを見届けて、明日一部始終を教えてほしい」というのであった。かくして一人家に残った夢想国師が見たものとは……。