源氏物語には巷には知られていない隠された一帖を瀬戸内寂聴が小説として創作。源氏物語当時、高貴な女人の部屋に忍び込むのには、側近の女房の助けなしには不可能でした。父帝の妃であり義母である藤壺への想いに駆られる源氏は、藤壺の女房、王命婦に藤壺との密会をせがみます。顔も知らない亡き生母桐壺の更衣に瓜二つの藤壺。密会は、源氏にとっても藤壺にとっても、手引きをする王命婦にとっても、身の破滅につながる行いです。それを実現させたのは、王命婦の源氏への恋心があったからでは―と語る瀬戸内寂聴。寂聴の描く熱くも哀しい男女の恋路をご堪能下さい。