キャラクターに催眠をかけてもらえる「感応時間」シリーズ。ストレスで疲れているとき。誰かと触れ合いたいとき。恋愛したい気持ちのとき。催眠を通じてリラックスし、お話の登場人物になりきることで普段の自分から解放されます。
≪トラックリスト≫ 01.熊野の語り部 02.厳冬の果て 03.早春の芽生え 04.催花雨 05.花言葉
≪あらすじ≫ うら悲しい琵琶の音色と共に琵琶法師の語る、昔々の物語……。
知りたくば、耳を傾けてくださいませ。 四季の生まれた由縁を、 一匹の心優しき鬼と大神様の恋路を。
――おや、聞いてくださいますか。
大神様がまだいらした頃の遠い遠い昔の話。
ここ熊野には、春を統べる大神がおりました。 それは偉いおみながみ様でありましたから、 年がら年中、ずうっと常春の暖かい陽気で皆過ごせたものです。
しかしそんな大神様に惚れて惚れて どうしようもなくなった情けない鬼がおりましてな。
一夜のうちに、乱積の石段を築き上げ、 神さんを閉じ込めてしまったんですわ。
それからです。 凍えるような冬と、うだるような夏が生まれてしまったのは。
で、春はどうなったと思います?
そうさね、恐らく。 神さんの美しく生き生きとした姿を目にしたい鬼が、 一年に一度、神さんを目覚めさせるんでしょうよ。
けれどまあ、聞こえてきますよ。 春となく冬となく、「媛、媛」と呼ぶ、悪鬼の声が。
それこそ、心の臓を突かれるような、恐ろしく熱い声が。
冬なんぞは特に五月蠅くて、気がふれそうな程、 春が恋しくて堪らないんでしょうなぁ――。