「日本のアンデルセン」と呼ばれた小川未明の作品。
いつの時代か、信濃の琵琶池には、年若い女が現れ、そこに立ち寄った者は消えてしまうという噂があった。
その女は、昔、主君の妻だった。忠義の厚い武士が主君の非行に諫言した際、癇癪持ちの主君が斬りかかろうとした。女はそれ止め、武士とともに国を去ることとなった。
2人は安楽に暮らしていたが、ある日武士は、主君がよこした兵によって殺されたらしく、女はひどく哀しんだ。それ以来、女は妖霊となって湖に現れるようになったのであった。
*文中に、現代の社会通念や人権意識において不当・不適切な表現や語句、差別的表現が見られる場合がありますが、創作された当時の時代的背景などを鑑み、また原文を尊重する意味も含め、そのまま朗読しています。