ある朝夢から目覚めると、毒虫になっていた。
突然虫になってしまった男と、その家族の生活という日常。 あまりにも非日常的な出来事には、説明も何もない。 ただ、【突然虫になってしまった】事実があるのみである。
「この子は虫じゃない。私達の家族だもの。」
そんなこと、現実では有り得ない。 目の前に居るのは、どう見ても毒虫である。 ただ、それだけ。
家族を養えず、母親を気絶させ、下宿人を追い出そうとする、 そんな虫が、家族である訳がない――。
20世紀を代表する不条理小説として、 現代でも必読書に挙げられることの多いカフカの「変身」。 本作では実力派の朗読家が、非日常の日常を、淡々と冷ややかに読み上げる。
人間のエゴや弱さを鋭く突く、問題作。