夫を待つ妻の心情を繊細に描いた、戦争に引き裂かれた夫婦の愛を謳う物語。 戦争のただ中、17歳の小雪は、雪深い只見の理髪店の、 まだろくに口をきいたこともない岩男のもとに嫁いだ。 そんな夫の腕に優しく抱かれて、初めて性の歓びに燃え上がったのは、悲しくも夫の出征前夜だった。 岩男の表情とあたたかな抱擁の思い出だけを胸に、姑のいる留守を守る小雪。 音信も途絶え、寂しい雪国での日々に体温の記憶だけが胸に突き刺さる ――そして5年。音信が絶えていた夫からの突然の帰国の連絡が! 小雪の心は喜びに震えるのだが・・・。