『絵のない絵本』は、感受性の強いアンデルセンが世界各地を旅行して回ったときの体験を元に、月が見てきた物語を一人の貧しい青年に語りかけるという形をとる。話は世界中を舞台にして、ヨーロッパ、インド、中国、アフリカと色々である。月が1月に1回少しの時間、光を照らして覗いた出来事を語るのだが、どれも、人間に対する愛情、貧しい庶民へのいたわり、神への敬虔な祈りなどがにじみ出ている。「どの一編もやわらかい微光を放つ真珠の玉で、この玉が首飾りのようにみごとな輪をつくり、円光となって読者をつつむ」(児童文学者の堀尾青史氏)。底本は、童心社の絵本で、いわさきちひろの挿絵によって更に作品の魅力が増している。