第三帖 空蟬 うつせみ 光源氏 十七歳 主な登場人物 空蝉、軒端荻
うつせみのわがうすごろも風流男(みやびお)に 馴れてぬるやとあぢきなきころ
光源氏に冷淡な空蟬は、身分違いの恋を続けることはできないと思いながらも、このまま自分が忘れ去られてしまう悲しさを覚えていた。 源氏は再び紀伊守の屋敷へと忍んで行き、そこで空蟬とその継娘である軒端荻(のきばのおぎ)が碁を打ち合う姿を垣間見る。年若い軒端荻と比べても、空蟬の魅力を改めて感じる源氏なのであった。 その夜、源氏は空蟬のもとに忍び込むが、源氏の気配を察した空蟬は薄衣一枚を置いて逃げ去る。残された軒端荻を空蟬と思い込んで近づいた源氏は、やむなくそのまま軒端荻と契り、空蟬の薄衣を持ち帰るのであった。 源氏は、空蟬の抜け殻のような薄衣 にことよせて歌を贈る。空蟬は源氏の愛に応えることのできない己の境遇を嘆いた。
作者:紫式部(むらさきしきぶ) 平安時代中期の女性作家、歌人。中古三十六歌仙、女房三十六歌仙の一人。父は越後守・藤原為時。母は摂津守・藤原為信女。夫である藤原宣孝の死後、召し出されて一条天皇の中宮であった藤原彰子に仕えている間に『源氏物語』を記した。