左右田五郎は、ある事件について話していた。彼はちょうどその現場に居合わせたのだという。
十月十日の午前四時、富田博士邸裏の鉄道線路で、富田博士の妻である婦人が列車に轢かれて亡くなった。
懐中に遺書があり、自身の病気を苦に自殺をする旨がしたためられていたが、黒田清太郎という刑事はそれを疑って捜査を進めた。
黒田刑事は証拠を元に、この事件が自殺ではなく富田博士による他殺であると推理する。そして夫人の遺体からは毒物が検出されたのであった。
しかし、左右田はこの結果を疑い、現場で拾った「一枚の切符」で博士の無実を証明してみせる、と言うのであった……
江戸川乱歩(えどがわ・らんぽ)
日本の推理小説家。1894年10月21日生まれ、三重県生まれ。筆名は、19世紀の米国の小説家エドガー・アラン・ポーに由来する。数々の職業遍歴を経て作家デビューを果たす。本格的な推理小説と並行して『怪人二十面相』、『少年探偵団』などの少年向けの推理小説なども多数手がける。代表作は『人間椅子』、『黒蜥蜴』、『陰獣』など。1954年には乱歩の寄付を基金として、後進の推理小説作家育成のための「江戸川乱歩賞」が創設された。
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