第10章 金―生かすも殺すも使い方しだい MONEY―ITS USE AND ABUSE
●金というレンズを通して見える人間性
●倹約のススメ
●分不相応な生活
●誘惑という天敵
●働く者恥じるべからず
●生活のための蓄財か金銭欲からの金儲けか
●最大の資産よりも最高の人格を目指す
本文より抜粋
「暮らしを楽にしようと思ったら、品性を落としてまで少しばかり金儲けするよりも、少しばかり貯金するほうが利口である」
―――ベーコン
「世のなかには常に、2種類の人間が存在する。金を貯める人と金を使う人―すなわち倹約家と浪費家だ。家や工場、橋や船の建設など、生活を向上させ、人びとを幸せにする偉大な仕事はすべて、金を貯める人、つまり倹約家が行なってきた。一方、自分の金を粗末にし浪費する人は、常に倹約家のしもべに甘んじてきた。それが自然の摂理であり、神の御心なのだ。将来に備えず、何も考えず、怠けていてもうまくいく、などと私には言えない。そんなこと を口にすれば、私はとんだ嘘つきになってしまう」
―――コブデン(政治家・経済学者)
金をどう扱うか―どのように稼ぎ、どのように貯め、どのように使うか―は、その人物が生きるための知恵をきちんと持ってているかどうかを知る最も良い方法のひとつだ。金を人生最大の目的と考えるのは、もちろんよくない。だが、金が物質的な豊かさや社会の繁栄に大きく役立っているのも事実であり、「金など重要ではない」などと聖人ぶって軽蔑するのも間違っている。重要でないどころか、人間の優れた資質のいくつかは、金を正しく使うことと密接な関係を持っているのだ。寛大さ、誠実さ、公正さ、自己犠牲の精神などもそうだし、倹約する心や将来への配慮といった現実的な美徳もそうだ。
手段さえ間違わなければ、生活の快適さを追い求めるのは悪いことではない。物質的に充足することは人間性の向上に必要であり、それによって家族を養っていくこともできる。