著者フローレンス・スコーヴェル・シンは、ニューソート(新思想)運動の流れをくむ思想家、講師として活躍した女性であり、欧米ではジェームズ・アレンやジョゼフ・マーフィらと並び称される成功哲学の啓蒙家です。
『引き寄せの法則』のウィリアム・ウォーカー・アトキンソンや『思考は現実化する』のナポレオン・ヒルと同じように、「よいことでも悪いことでも頭の中で考えたことが現実化する」という考えに基づくポジティブ思考の成功哲学です。そのため、言葉の力を重要視し、肯定的な言葉を口にするアファメーションを行うことによってポジティブ思考を、そして成功を引き寄せられると考えます。
聖書の中のエピソードの隠された意味を掘り起こしながら、自分の考えを裏づけ、説明していくというスタイルを取っているため、当然ながら、日本人としては正直違和感を覚える部分もないではありません。
しかし、言うまでもないことですが、欧米の人にとってキリスト教も聖書も日常生活と切り離せないものです。幼い頃から聖書とは親しんでいて、その内容は熟知しています。私たち日本人にとっての国づくり神話や、桃太郎やかぐや姫などのおとぎ話のような、あるいはそれ以上のものなのです。ですから、聖書をテキストにしてその隠れた意味を探るという著者の手法は、欧米人にとっては非常に自然なものです。
自身の周囲で起きたエピソードを交えながら、難しい言葉や言い回しは一切使わず、誰にも分かるような言葉を使って、聖書のエピソードに著者ならではの解釈を加えていく、その手際は見事です。
「幸福を思えば幸福を引き寄せ、不幸を思えば不幸を引き寄せる」
「あなたにとっての魔法のランプはあなたが発する言葉」
「理屈で考えるな。直感に従え」
「思考をコントロールすることはできなくとも言葉をコントロールすることはできる」
「今こそが約束のとき、今日こそがその日」
本書にちりばめられた珠玉の知恵をヒントに成功への秘密の扉を開けていただければと思います。