『ロマネスク』という作品は三つの話で構成されており、
それぞれ、太郎、次郎兵衛、三郎の人生が描かれています。
◇(一)仙術太郎
◇(二)喧嘩次郎兵衛
◇(三)嘘の三郎
●「仙術太郎」
太郎は生まれたときからほかの子どもたちとは何かが違っていた。
外で遊んだりすることもなく、毎日のように蔵の中に入っては
父・惣助の蔵書を手当り次第に読んでいた。そのうちに蔵書の中に
“仙術”の本を見つけた太郎は、これを最も熱心に読みふけった。
そして蔵の中で一年ほど修行して、鼠と鷲と蛇になる法を体得する。
やがて、隣りの油屋の娘に恋をした太郎は、津軽でいちばんの
よい男になりたいと願う。そして太郎はおのれの仙術を使って、
よい男になるように念じはじめる。十日目、その念願が叶う。
しかし太郎は鏡の中を覗いてとても驚いた!?
●「喧嘩次郎兵衛」
ならずもの、と呼ばれて不潔がられていた
次郎兵衛は毎日のように 酒を呑んだくれていた。
そしてある時、喧嘩の強い男になりたいと思いたつ。
その日から次郎兵衛はこっそり
喧嘩の修行を開始する。そして三年間の修行を終え、
誰にも負けないほどの強い男になる。
しかし喧嘩が強くなった次郎兵衛に訪れたのは
予想外の展開であった…。
●「嘘の三郎」
三郎は嘘しかつかない。三郎は考える。
ひとつ今日より嘘のない生活を
してやろうと思いたつ。みんな秘密な犯罪を持っているのだ。
びくつくことはない。ひけめを感ずることもない。
嘘のない生活…。その言葉からしてすでに嘘である。
三郎は毎夜、苦悩する。そしてある日、三郎は朝っぱらから
居酒屋へ出かける。縄のれんをはじいて中へはいると、
この早朝に、二人の先客があった。驚くべし、
仙術太郎と喧嘩次郎兵衛の二人であった…。
三者三様の物語がここで出会う。