【小学館の名作文芸朗読】
「自分」は、偶然見つけた道を気に入り、頻繁に通うようになる。その道は電車の終点E停留所から続く閑散とした路で、沿道には庶民的な家が並び、時折、家の内部が窓越しに見える。ある日、その道沿いで咲く二本の卯の花(ウツギ)に目を留め、かつて夢中で探した記憶を思い出す。やがて、友人と共に市街へ出る道を歩きながら、丘の上からの眺めを楽しむ。そこから、新たな近道として、崖を登ることを思いつく。ある雨上がりの日、「自分」はその崖道を通ろうとする。しかし、ぬかるんだ赤土の路は滑りやすく……。