【小学館の名作文芸朗読】
「ぼく」は肺病療養のため温泉地に滞在していたある夜、波打ち際に立つ若い女性の姿を目にした。彼女が自殺を図るのではと駆け寄るが、自身が喀血して倒れてしまう。介抱をきっかけに、宿が近かったこともあり、二人は自然と交流を深めていく。彼女には轡川という男がつきまとっており、暴力的に関係を持たれた過去があるという。その関係を終わらせようと白浜に来たと話すが、実際にはまだ彼の影を引きずっているようだった。「ぼく」は彼女の美しさと優しさに惹かれつつも、語られる過去と目の前の彼女との乖離に複雑な思いを抱いていた。