【小学館の名作文芸朗読】
東京の芝区にある質屋で、女房が五、六歳の娘を残して病死したため、所天は後妻を迎えた。後妻は従順で愉快そうな女性で、継子にも真の母親のような愛情を示したため、継子も懐き所天も安心だった。しかし、しばらくすると後妻は黙り込み、口数が少なくなってしまう。質屋の親類の老人がこれを心配し、理由を尋ねると、夜寝ていると仏壇のある部屋との間の襖が開き、藍微塵の衣服を着た若く美しい女性が出てきてお辞儀をすると打ち明けた。藍微塵の衣服は、前妻の好んだものだった。
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