【小学館の名作文芸朗読】
関東大震災を記録した随筆。─幼少期から母親の安政の大地震の話を聞かされて育ったわたしは、人一倍の地震恐怖症であり、風と地震を最も恐れている。特に明治27年の強震は、記憶に強く残る恐ろしい体験だった。少し強い地震があると、そのあとにゆり返しがこないかと不安になる。大正12年9月1日、予感もなく迎えた朝は蒸し暑く、時折雨が降った。庭の朝顔と糸瓜が風に揺れる様子に暴風雨の予感を感じ、落ち着かない気持ちで下座敷の原稿に向かっていた──。
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